洗練したセラミックデザインの為に
- 2022.06.09
- #治療

洗練したシルエット、スッキリとした表情を創造するセラミック。
審美歯科治療の1つであるセラミック治療ですが治療の仕方ひとつでその再現性には差が出てきます。特に前歯は顕著にそれが分かることでしょう。
過去の投稿でもセラミックの特徴やセラミックの種類についてお話ししてきまた。今回は満足いく結果に結びつけるために大切なことを話します。
診断
これは他の疾患に関しても最も重要と言えるでしょう。今回はセラミックを用いた審美歯科治療における診断についてです。
当院ではレントゲン、カラー写真、歯周検査などの資料採得を行っています。
これらは、形、色、素材などを含め仕上がりのゴール設定、治療後の経過の予測を見立てる上で欠かせないものです。はじめて施術を受ける方は「そんなに検査するの?」と思う方もいらっしゃるでしょう。
これらは何のために行っているのか。
レントゲンではまずセラミック治療行う歯の状態、骨など視診では把握できない歯茎の下の状態を把握します。歯の根の位置、歯の傾き、骨の状態、神経の位置、神経の治療、土台の治療の状態や土台の種類などを診査します。
カラー写真では口腔内の歯の形、色はもちろん、噛み合わせの当たり方、修復物の状態、を見ています。また口の中だけではなく、口唇の形、歯が唇からどの程度見えているのか、顔に対する歯の位置、向き、形を把握しています。
歯周ポケット検査では歯周病の状態を把握して、歯肉の治癒後の変化や治癒後の経年変化の予測に役立ちます。
これらの総合的判断により歯、歯肉、全体の歯並び、唇、顔など様々な要素に調和したゴールこそ、審美歯科治療と呼べるセラミック治療の姿だと考えます。
補綴前処置
セラミックを入れる前の準備処置も美しい仕上がりの為に重要です。
歯肉に関しては歯周治療ももちろん行いますが、歯肉のライン揃えるまで求めるのであれば補助的な処置が必要なことがあります。
歯肉のラインが不揃いの場合、外科的に歯肉を下げることもできます。ただし、歯肉のタイプによっては下がりすぎるリスクもあるため慎重を要します。
歯肉が下がりすぎている場合
失活歯(神経のない歯)であれば歯を上に牽引し引っ張り上げることで歯と共に歯肉が引き上げられ高さを持たせることができます。
いずれの方法も骨の量や歯肉の状態で適応か否か決まる為、術前診査が大切です。
また、これらの術式は極微力の歯肉ラインのコントロールには限界があるため次の過程の仮歯(プロビジョナルレストレーション)において最終的な微調整をします。こちらも後程お話しします。
もう一つ、前処置として大事なのはコアと呼ばれる土台です。注意が必要なのはメタルコア(金属の土台)。これは歯や歯肉の色に影響します。その為ファイバーポストコアという白い土台に置き換えることが多いです。これは色のためだけでなく、歯が折れるリスクも下げ、将来的な抜歯リスクを下げてくれます。
プロビジョナルレストレーション
仮歯を作る工程。これは形、機能の確認する過程。最終的な形をここで決めていきます。形を患者さんの主観的、我々の客観的、双方から目定めていき擦り合わせを行います。
なおかつ噛み合わせ、発音など機能的に問題ないか、使用感を見ます。
それから先に話した歯肉のコントロールの微調整もここで担います。仮歯の縁のボリュームも薄く圧迫を弱めることで歯肉を引き上げる、逆にボリュームを持たせることで歯肉をわざと圧迫し歯肉を下げたりもします。
またこの圧迫度合いで歯間乳頭(歯の間の三角形の歯茎)の形もデザインします。これは骨の高さなども条件として必要な為出来ないケースもあります。
こういった細やかなデザインの段階で、形はこれでいいのか?機能面に問題はないのか?患者さんが自分で清掃できる衛生的な形なのか?と確認と修正を繰り返していきます。
印象(型取り)
本番の型取り。的確に形を採得します。
仮歯を作る工程で最終的な形に近い形にしている為、微調整の範囲で削ります。
この際、審美歯科治療の色を造り手の歯科技工士にどう伝えるかが難しいところです。
シェードテイキングという過程で色を見定めます。自然光での見え方を大切にしているため、当院では自然光がしっかり入ってくる医院設計にしています。
決めた色の候補を口腔内と一緒に一眼レフカメラで撮影し歯科技工士にデータを送ります。印刷するとプリンターのスペックに左右されてしまいますし、画質の悪い写真データもまた正確に色を伝えられません。ましてや、写真すら撮っていないと、歯科技工士さんの技術が高くても白黒の資料を元に造るという無理難題になってしまいます。
セラミックの作製
歯科技工士による作製の過程です。我々が採得した資料を元に作って頂きます。プロビジョナルレストレーション(仮歯)のデータを参考に作製していきます。昔は仮歯の入った型取りの資料を参考にしていましたが、現在はデータスキャンにより過去のデータを反映させることができ、デジタル状で調整していきます。(デジタルデザインの話は過去の投稿をご参照ください。)
色調データを元に選んだ、セラミックのディスクから3Dプリンターで削り出します。
また、さらに細かい色の再現が必要な場合には、ここからレイヤリングという陶材を手作業で盛り付け、焼く過程があります。
この色の再現は歯科技工士さんの腕で大きな差がでてきます。
その為、セラミックを用いた審美補綴物の熟練した歯科技工士さんに依頼を受けてもらうことも重要です。
歯科技工士さんによっては依頼料の高い場合もあるでしょう。特に前歯は再現性に差が出るため、高くとも納得いく作品を依頼したいと思っています。
私たちも、そのクオリティーの作品を提供できる価格を患者さんから頂いております。
ただ白いだけのセラミックを提供するつもりはありません。
口の中に装着して身体の一部にする物なので、こだわり抜いた歯科技工士さんの作品を是非装着して頂きたいです。
装着
最後に出来上がったセラミックの適合、色、形、噛み合わせなどの機能を実際に口の中で確認して調整します。
ここで色などに問題があれば、セラミックを入れた状態で再度写真を撮り、歯科技工士に修正依頼を出します。難しい色合いの場合には何度もやり直すこともあります。
調整し問題が無ければ歯と接着して終えます。接着過程においても極薄く接着剤を入れますが、これもまた色に影響する為、接着材も実は色を選んでいます。
こうして無事終了、、、と言いたいところですが、ここからが大事。
メインテナンス
綺麗に入れて終わりではありません。むしろ始まりと言っても良いでしょう。
どんなに美しく創造したセラミックでも入れた直後が最も美しく、そこから変化をします。長期的な美しさや、機能を求めるためには必ずメインテナンスが必要です。時には噛み合わせの調整も必要かもしれません。
忘れてはいけないのは、セラミックは優秀な素材ですが、あくまで人工物ということです。生体のような自己修復能も無く、また生体とは異なる経年変化を起こすでしょう。
生体と一体となり口腔という一つの器官の中で調和するためには多少の手を加えなければなりませんので、プロのメインテナンスが必要です。
人工物との境目は劣悪な環境下になってしまえば虫歯も出来ますし、セラミックを入れている歯自体は歯周病にもなり得ます。
繰り返し治療に至らないため、自身の組織を長く機能的に美しく温存する為、定期的なプロケアを推奨致します。
📍 上越インター前
生体に調和した機能美を目指す予防型歯科医院 》》 デンタルオフィスK
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