感染対策 ウォッシャーディスインフェクター
- 2023.08.26
- #感染対策

ウォッシャーディスインフェクターとは当院でも導入している医療器具の洗浄機です。安全、清潔のため開業時より活用している機材です。
感染対策として『滅菌』に注目が集まりがちですが、『滅菌』の工程の前の『洗浄』『殺菌』という工程が滅菌効果を最大限発揮するために非常に重要なのです。
ウォッシャーディスインフェクターは自動で洗浄するだけの器械ではなく、次のようなメリットがある医療機器です。
①誰もが高いレベルの洗浄と熱水消毒を自動で行うことができる。
②中腔物の洗浄も可能である。(歯科医療器具は複雑構造のものが多い)
③鋭利物を手洗いする際の切創事故を防止することができる。(※交差感染の予防)
④スタッフが洗浄、消毒に手を取られないという時間的メリットがある。
(※交差感染とは、共有した物品や環境・医療従事者の手指などから微生物が伝播し感染することをいいます。)
ウォッシャーディスインフェクターの国際基準
2006年にウォッシャーディスインフェクター(WD)に関する国際規格ISO15883の主要部分が承認され2011年に国際承認されました。日本国内では2012年に日本医療機器学会より「洗浄評価判定ガイドライン」が示され、一般的な鋼製小物に対する洗浄後の残留タンパク質について、ATP測定値※1が許容値200µg以下、目標値100µg以下が勧告されました。また、熱水消毒を評価するために、従来の温度と消毒時間を用いる評価方法とともにA₀(エーノート)値という概念が用いられています。
※1:微生物、血液、体液に存在すると言われているATP(アデノシン三リン酸)の量を専用機器で数値化したもの。
熱水消毒について
熱水消毒は「温度」「時間」を注意すれば多種多様な微生物に有効であり、環境負荷も少ないため、器材に対する消毒法の第一選択とされています。消毒剤を用いる場合は、これに「濃度」の管理と環境、人への影響を考慮する必要があります。 熱水消毒に関してイギリスのガイドラインでは、ほとんどの病原性微生物は、71℃3分以上、80℃1分以上、90℃1秒以上で死滅すると定義されています。 熱水消毒のレベルを示すA₀値とは、例えばA₀ 600ならば80℃で600秒間熱水消毒することを意味しています。また、ウォッシャーディスインフェクター(WD)には観血処置で使用した器材やB型肝炎ウィルス対策としてはA₀ 3000以上が求められ、ドイツではより厳格なA₀ 12000以上が求められています。一方、日本ではリネン類に対してA₀ 600以上が規定されているだけです。
ウォッシャーディスインフェクターのメカニズム
ウォッシャーディスインフェクターは血液などの蛋白汚れを落とすことを目的とし、予備洗浄、熱水消毒工程があるバリオTDプログラムが組み込まれた医療機器です(下記グラフ参照)。 予備洗浄とは血液などの蛋白汚れが固まらないように最初に43℃以下で洗浄することでありますが、家庭用の食器洗浄器は蛋白汚れではなく、油汚れを落とすことを主な目的としているためこの予備洗浄機能がなく、専用洗剤も油汚れを落とすことを目的とした洗浄剤が用いられていることと、熱水消毒機能も搭載されていないことに留意しなければならなりません。
最高基準の滅菌機を使用しても、その前の『洗浄』『消毒』の工程がきちんとされていなければ、血液などのタンパク質などが高温での滅菌過程で固着してしまいます。歯科で扱う器具は中腔構造など複雑な器具が多いため特に注意が必要です。そのため当院ではウォッシャーディスインフェクターの高水準の『洗浄』『消毒』→最高水準のクラスB滅菌機での『滅菌』という工程を採用しております。
今回は感染予防の取り組みの一部を紹介しました。消毒、滅菌の考え方も新しくなっていくものも多いです。これからも、安全に安心して通院していただくよう、患者さんの目に見えないところの取り組みも更新して行こうと考えております。
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