歯根垂直破折を保存した一例
- 2022.02.15
- #治療

今回は歯根破折に施した治療をご紹介致します
同様の疾患の方のために資料をご提供頂いた患者様に感謝申し上げます
歯の破折に関しては過去の投稿でもお話してますのでご参照ください。
本症例は初診時、右上側切歯(2番目の前歯)の歯茎の腫脹、疼痛を主訴に来院され、診査したところレントゲンで垂直破折が疑われ、また歯周検査でも破折を疑う所見を認めました。しかし、この歯は生活歯(神経の生きている歯)であったため確定診断を下すには懐疑的でありました。というのも歯根破折の頻度は圧倒的に失活歯が割合を占めていること、また側切歯には斜切痕という解剖学的に正常な溝があり、斜切痕が根尖(歯の根の先)付近まで及んでいることでの炎症も否定できていませんでした。

そこで歯科用CT撮影を行い診断することとしましたCTで見ると斜切痕は確かに認めますが、そこから歯髄腔(歯の神経の器)にまで破折線が到達していました。また垂直的に歯根の先端付近まで破折が及んでいることも確認できました。複雑破折を起こしているのであれば抜歯も検討する余地がありましたが、今回は、歯牙の意図的再植にて歯を保存する選択をしました

破折線が歯髄腔まで及び歯髄炎(歯の神経の炎症)症状を認めていましたので、まず抜髄処置(歯の神経を取る)を施しました。この時点でも内面に破折線を確認できましたので診断は誤っていなかったことが分かりました。抜髄後、将来的な破折を防ぐため内面の破折部を含み接着剤で固定しつつしなりのあるファイバーポストで歯牙を支えるように修復しました。その後、一度歯を抜き、外部の破折線部を一層削り、消毒後に接着剤にて修復し、再植(元の位置に戻す)しました。
術後、歯肉の安静を図ってから歯周検査をしたところ術前7mm以上あった歯周ポケットが3mmとなり歯肉の付着を獲得でき良い予後をたどっています
今回のように、たとえ深い破折だとしても抜歯を避けられることがあります。前歯を抜歯した場合にはインプラント、入れ歯、ブリッジなどを施すにあたり審美的な回復を考えると人工物での修復は高いテクニックが必要です。
もし天然組織を保存でき、疾患の無かった状態に近い予後をたどれるのであれば、それが一番自然な審美的歯科治療となり得るのです歯が曲がって生えたり、変色が激しい症例ではセラミック治療などでの修復も有効ですが、天然歯形態に問題がなく、歯根(歯茎に埋まっている部分)のみの問題の時には本症例のような意図的再植が有効です。
なんでも抜歯を避けられるわけではありませんが、抜歯に至る前にとれる手段がないか考える価値は十分あると思います
📍 上越インター前
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記入者この記事を書いたメンバー
